消費成熟時代に何かを売ろうとしたら、まず興味を持ってもらわないといけません。
売ろうとする商品そのものが、とてもユニークで革命的なものであれば(例えばiPhone発売時のように)、商品を見せるだけで興味を持ちます。しかし、そんな商品はそうできるものではありません。
良い商品だけれども、それだけで人々の興味を惹きつけるだけの力が無い場合(ほとんどの商品が当てはまると思いますが)、ストーリーや見せ方で興味を引かなければいけません。
ストーリーというのは、要するに提案の理由です。しかし、ストーリーがあれば良いというだけではもちろんありません。
そこに新鮮だったり、困っているときにぴったりのアイデアだったり、人々の心情にマッチした話であることが必要です。
しかし、見せ方というのは、必ずしもストーリーと直結していなくても良い場合があります。もちろん、ストーリーに合った見せ方により、納得性が高まり購買意欲が高まるという流れは起こるのですが、それは興味を持った後です。見せ方で興味を引くのは、ディティールや奇抜なアイデア、あるいは、人の心にすっと入ってくるニュアンスだったりしますで。
例えば、TVCM等でも、商品名は憶えていないが変な歌は憶えているとか、最後に出てくるシーンの女の子の表情が頭に残っているとか、店頭ディスプレーのキラキラした装飾が新鮮だったとか・・・・それらは、商品やストーリーとは関係なかったりしますが、興味を引いているわけです。
特に商品自体がコモディティ化(同質化)などにより差別化しにくい場合、こういった見せ方で食いつき所を作るように意識していないと、どこにも興味を持ってもらえない販促になってしまいます。
興味を持つ、内容を知る、納得するという流れで初めて購買意欲が生まれるかどうかというまな板に乗ります。
販促のストーリーや切り口ばかりが重視されがちですが、この最初の「興味をもってもらう」食いつき所をどうつくるかも、とても重要なのです。
しかし、企画段階でこれらの「食いつき所」が果たして功を奏するものなのかどうかの判断はとても難しいものです。判断基準は感性だからです。しかも、「食いつき所」に結構費用がかかったりします。
その結果、予算が通らずせっかくの「食いつき所」が削られ、「食いつき所」のない無味乾燥の販促が実施されたりします。こういったケースは結構多い気がします。
それはこの「感性の食いつき所」というものがちゃんと意識されておらず、そこの重要性を理解しているクライアントはもとより、制作者自身が認識していない場合もあり、重要性についてちゃんとした説明がなされていなかったりします。
偶然上手くいったケースを除くと、「感性の食いつき所」についてのちゃんとした認識を持ち、クライアントと制作者の信頼関係があって初めて「食いつき所」が力を発揮すると言えそうです。
しかし、戦略的に販促を行っていくには「感性の食いつき所」もちゃんと認識していくことは必須です。